お誕生日おめでとう。
1年間の育児で母親としておおくのことを学ばれたと思う。赤ちゃんも成長したけれども、両親も人間として成長されたことを信じる。
1年をふりかえって、母親の心にもっともふかくきざみこまれたことは、この子にはこの子の個性があるということにちがいない。その個性を世界中で一番よく知っているのは、自分をおいてほかにないという自信もうまれたと思う。その自信を一番大切にしてほしい。
人間は自分の生命を生きるのだ。いきいきと、楽しく生きるのだ。生命をくみたてる個々の特徴、例えば小食、例えばたんがたまりやすい、がどうあろうと、生命をいきいきと楽しく生かすことに支障がなければ、意に介することはない。小食をなおすために生きるな、たんをとるために生きるな。
小食であることが、赤ちゃんの日々の楽しさをどれだけ妨げているか。少しぐらいせきが出ても、赤ちゃんは元気で遊んでいるではないか。無理に嫌いなご飯をやろうとして、赤ちゃんの遊びたいという意思を押さえつけないがいい。せきどめの注射に通って、満員の待合室に赤ちゃんの活動力を閉じ込めないがいい。
赤ちゃんの意思と活動力とは、もっと大きな、全生命のために、ついやされるべきだ。赤ちゃんの楽しみは、常に全生命の活動の中にある。赤ちゃんの意思は、もっと大きい目標に向かって、鼓舞されねばならぬ。
赤ちゃんとともに生きる母親が、その全生命を常に新鮮に、常に楽しく生きることが、赤ちゃんの周りを常に明るくする。近所の奥さんは遺伝子の違う子を育てているのだ。長い間かけて自分流に成功しているのを初対面の医者に何がわかる。
「なんじはなんじの道を進め。人々をしていうにまかせよ」(ダンテ)
---松田道雄 1967 『育児の百科』
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